君の眼鏡は銀色だって知っているのに、未だに君の瞳が何色なのかを知らない 霞んでいく視界のせいでもなく、夜のせいでもなく、君が同じ高さにいないせい それでも、積み上げられた文庫本の背表紙を足で辿れば、 真皮の裏側が疼きだし、奥の奥のもっと奥が、四度目の夜を数えてしまう いつだって誰かを淋しい人間にしようと必死になる、悪い癖 1日に何度も繰り返される言葉は、誰かを淋しい人間として閉じ込める 淋しい人間が出来上がると、君は優しく笑うのだろうか 最後は死を運ぶに違いないのに、其の言葉は毒を含まず此方に届く 見えない場所で進行するものを、掴めないのが人間の限界であるように 言葉が正しく意思を含んで届く範囲はとても限定的 其の虚しさから今日も哀しみながら君に身を委ねるが 優しいはずの君の掌は何も生み出せないようだ 霞む視界に飲み込まれないうちに夜の終わりを探すため、 最期には君の瞳に汚い液を撒き散らしてやろうと決意する 神様の墓 |