朝日が昇る時間に窓際の椅子に腰掛けて、名前を教えて欲しいと涙を流した彼は膝の上で両手を握り締めていた

此方を見ずに呟かれた言葉を拾ってから、その意味を理解するまでの3秒間に彼はまた静かに涙を流す

美しかった、其の言葉すら稚拙すぎて躊躇われるほどに、此方を見ずに泣く彼は白い服と溶け合っている

彼に掛けるべき言葉として正しいのはどれなのか

わからないまま、再び窓際の椅子に座る彼と其の両手を見つめると

浮かんだ言葉は使い古した標語のようにスラリと零れて消えていく

彼の震える両手、其の細く枝分かれした紫の道は何より澄んでいて

確かめるように、震えながら、怯えながら、この名に触れて欲しいと思えた

×××ですよ、×××です、この名を二度、繰り返す

彼の顔が此方に向くと、3日前の憂鬱が嘘のように、体内を流れる血が優しくなる

×××

声にならない声で微かに呼ばれた気がして、静かに其の硬い掌に頬を摺り寄せた


希望に跪け