わたしの骨は午前三時あたりが一番柔らかい
誰かに好まれるはずの包容力を帯びた肉を相手に
いらないからと何度も泣いた日は特に柔らかい

骨が柔らかくなる午前三時
垢染みた左側が黒ずんだ頸部を按撫し、締める
差し向けられた優しさはすべて跳ね返したい
肺の奥に膠着してしまう前に跳ね返したい

包容力ばかり帯びた肉の優しさはいらない
目蓋の裏に映っていいのは毒を帯びた赤紫
焼き付けるように光を遮断する午前三時
わたしの骨は頗る柔らかい

骨が再構築されて節々が悲しむ午前六時
わたしが眺めてるのは鬱々とした朝日
その光の前でだけは寄り添うように
包容力を帯びた肉の鼓動を聞いている

わたしの骨は柔らかく
わたしの左側は荒々しい
目蓋は凄艶ばかり追いかけて
颯爽と朝日をつかまえる

細胞に残る抱擁の記憶
跳ね返せない優しさ
わたしを構築する要素として
骨の間に忍び込んでいる
このひとが こわい



しあわせな絶望