鎌倉


私の目に映る世界はすべて歪んでいた。ぐにゃりとまがり、まるで水のようにふにゃふにゃとゆれている。私の目に映る鮮やかに歪んだ世界。そこに突然現れたのが鎌倉だった。世界の中で唯一、彼だけが歪みを持たずに私の目に映っている。しかし、彼は色をもっていなかった、白黒なのだ。わたしの世界は歪んでいるが、どれも鮮やかな色をもつ。しかし彼は歪みをもたず、色さえももたないのだ。そんななか、彼の目はにぶく青色に光っているのだが、その色はいつも揺らいでいて、いつ消えてしまうかもわからない危うさがある。本来、彼の目は黒いはずなのだ。彼はハーフではないしカラーコンタクトをしているわけでもないので、日本人の特徴である黒い目を持つはずなのだ、いや彼はもっている。友人と話しているときの彼の眼は深い黒であった。しかし、わたしを見るとき、彼の目はにぶい青色になるのだ。わたしには、それがとても恐ろしいことのように感じられるのだが私は彼から目を離す事が出来ないでいる。彼の青色の目を見ている間だけは、鮮やかに歪んだ世界が、美しいものに感じられるから。

鎌倉はそんな人間だ。

(070111)