「 明日はテストだけど帰らなくていいの? 」
誰も居ない教室の窓から
誰も居ない校庭を眺める青木の背中に問いかける
他の生徒が勉強の為に続々と帰宅していく中で青木だけが座席から離れようとしなかった
それが妙に気になりこうして青木の様子を観察しているが一時間ほど動きが見られない
さすがに僕も帰らなければと思い問いかけたわけだが
やはり反応は見られない
「 僕は帰るよ 」
反応は無し
「 青木はテストや勉強が嫌いなんだね 」
鞄を肩に掛けながらそう言うと青木が振り向かずに口を開いた
「 あんなモノで私という人間の評価をされるのが嫌いなだけよ 」
「 人間の評価、か 」
「 上限が百と決まっているなんて馬鹿げているわ 」
「 そうか 」
「 そうよ 」
そう言ってまた口を閉じた青木に背を向け教室から一歩踏み出す
そこで一度立ち止まり、わらう
「 青木 」
返事がないのを確かめてから、わらいを含んだ声を吐き捨てる
「 赤点には気をつけた方が良いよ、夏休み補習だから 」
青木の制服が擦れる音は鈍さを増していくチャイムに掻き消された
(080321)